Upstream valley of Loire river (ロワール川の渓谷), 1907-1910 / RIPPLE 6-1

167 × 125mm, acrylic on canvas
2017年

RIPPLEシリーズでは、フランスの写真家フェリックス・ティオリエの風景写真をモチーフに制作をしている。

ティオリエの写真の背景には、近代化されるパリの姿と、その一方農村で暮らす人々の生活が存在し、その都市の風景や人間の手の加わっていない無垢な自然と人の痕跡が認められるものが写し出されている。今日において、核やミサイル、軍事的圧力や見えない何かに私たちの生きている世界は日々めまぐるしく現状が移り変わっている。そのなかで一瞬にして失われる不安や危機感を強く感じたことが本作を制作するきっかけとなった。これ迄の作品では主体_客体の関係ではない人間と動物の関係をモチーフに制作してきたが、本作では、風景をモチーフとし、人間と世界が相関しているところに形成されてしまっている円還の内部でのみ思考する事への批判や、相関性の外部も含め自覚することへの願いを含意して制作している。写真というメディアによって時間と空間を統合するものとして引用し、写真に写し撮られた花卉や生き物のアウトラインを分断するのではなく、繋げるものとして絵の具に起こし、上から絵の具を塗り重ね、さらに削りとることで等価なものになるように表現している。


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