修士制作展「ZOKEI展」

2016年
東京造形大学付属美術館 / 東京







「動物と人間の関係からみる絡まり合いの世界」

  私たちは、人間を含めた生命体や非生命体に取り囲まれ、様々なものと絡まり合うようにして生きている。しかしながら、現実には、情報メディアや産業機械の発達によって個々が断絶した状態に置かれており、周囲を取り巻くものに対しての実感が薄れてしまっている。私は、こうした時代の中で失われてしまった、様々な物体と人間との関係の回復を、特に動物と人間の関係を取り上げて考察してきた。

  作品の中心に位置する像は、動物と人間が一体化した「支配―被支配」を超えた関係を示している。この姿には、人間という支配者の眼差しに対する批判も含意される。現代においても、近代の人間中心主義的な世界観や理性の支配によって、戦争や環境破壊が未解決のまま続いている。こうした状況の中で、動物と人間の新しい関係を表すことが必要だと考えている。

  しかしながら、関係は目に見えないものであり、直接的に描き出すことはできない。そのため、既存の絵画表現をそのまま流用するのではなく、作品を成り立たせる造形的な要素を一つ一つ検討してきた。そこから発見できた、関係性の表現に有効と思える形式、サイズ、色彩を以下に説明する。

  まず、形式には平面の概念に収まらないレリーフ(沈み彫り)を採用した。像を、単なる画像としてではなく、できるかぎり実体的に取り扱うためである。実体的とはいえ、自立的な彫像(round)の場合、像と周囲の空間を一体的につくることができないため、やはりレリーフが有効といえる。特に、地の空間を彫り下げない沈み彫りは、像の手前側にまで連続する空間を表現するために有効な方法である。

  次に、画面上の像の大きさは、等身大(life size)を基調とした。絵画の場合は通常、描かれる像の大きさは問われないが、私自身と像の大小関係を等しいものとして設定した。そのことによって、制作を行う自分自身を画面上の人間の姿に重ね合わせ、感情移入できるようになった。

  最後に、色彩については、複数の色が影響を与え合うように用いた。関係を考察する以上、色自体も個々の存在に属するもの(固有色)として考えるべきではないからである。基本的には、像と空間には別々の着彩方法を用いてきたが、類似する色彩を使用することで、両者が分離されたものにならないように配慮した。

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